ポイントを差し引いて安く見えることと、今日の支払いが少なく済むことは別だ。俺は、買い物を助けるAIほど、この違いを見える形で残してほしいと思っている。
LINEヤフーは10月28日、Yahoo!ショッピングの「AIおまかせ比較」を刷新し、「AIベスト提案」を順次提供すると発表した。商品候補を「価格」「お届け」「評価」「ベスト」の目的別ランキングで示す機能だ。
俺が注目したのは、AIの賢さをうたう言葉ではない。「価格」の順位を決める計算式だった。
「価格」は、支払額だけの順位ではない
公式発表によると、「価格」のランキングは、同じ条件を満たす商品候補について、次の式で算出する。
商品価格-クーポン割引額-獲得ポイント+送料
送料や使えるクーポンまで比べてくれるのは助かる。表示された商品価格だけを見て、購入手続きの途中で印象が変わるような比較を減らせるからだ。利用できるクーポンや獲得ポイントに応じて、利用者ごとに順位が異なる場合もあるという。
ただし、この式には「今回獲得するポイント」が差し引かれている。つまり、示されるのはポイントまで織り込んだ比較値であって、今回の決済額そのものではない。
ここを混ぜると、「お得な買い物をした」と「今月の出費を抑えた」が同じ話になってしまう。財布には、計算上のお得だけでなく、実際の支払いにも耐えてもらわなければならない。
ポイントを普段の必要な買い物に使える人には、この計算は判断の助けになるだろう。一方、使い道が決まっていない人まで、同じ価値として受け取る必要はない。俺なら、支払額とポイント込みの比較値を、別々に見る。
これはポイントを否定する話ではない。自分にとっての価値を、ランキングの計算に丸ごと預けないという話だ。
「ベスト」を一つに決めない刷新はいい
従来の「AIおまかせ比較」は、複数の観点で比較し、総合的に一つの商品を提案する仕組みだった。今回の刷新では、目的別の順位を切り替えられる。
- 価格:クーポン、獲得ポイント、送料を加味した順位。
- お届け:お届け予定を基準に、より早く受け取れる候補の順位。
- 評価:商品レビューの評価が高い商品の順位。
- ベスト:「価格」「お届け」「評価」の各順位をもとに算出する総合順位。
俺は、この分け方を評価する。買い物には、いつでも通用する一つの正解などないからだ。
急いで交換したい道具と、届くまで待てる日用品では、配送の早さに置く重みが違う。商品レビューの評価も参考にはなるが、自分の用途への適合まで代わりに決めてはくれない。
「ベスト」は便利な入口だ。ただ、総合順位が高いことと、自分の条件に最も合うことは同義ではない。AIに候補を絞ってもらうことには賛成だが、何を優先するかまで黙って委任するのは惜しい。
買う前に見るのは、三つでいい
使い方は、気になる商品の商品詳細ページやお気に入りページから、希望する商品の条件を指定して候補を探し、目的別のタブを切り替える流れだ。公式発表ではPC・ウェブブラウザーとiOS・Androidアプリが対象とされているが、順次提供で、端末によって表示されない場合もある。
実際に買う段階では、俺なら次の三つを確認する。
- 今回いくら支払うか。 ポイントを差し引いた比較値とは別に、購入手続きで支払額を確かめる。
- そのポイントを何に使うか。 必要な買い物に使える見込みがあるか、付与・利用条件も含めて考える。
- いつまでに必要か。 急ぐ買い物なら「お届け」を見て、購入先のお届け予定も確認する。
これは機能を実際に試したレビューではなく、公表された仕様をもとにした使い分けの提案だ。公式発表も、生成AIの出力の正確性などを保証していないと明記している。順位だけで判断せず、最後の購入条件を見るところは省かない方がいい。
計算の代行と、価値判断の代行は違う
今回の機能を見て俺が考えたのは、AIが計算を引き受ける便利さと、買い物の条件そのものの複雑さだ。価格、送料、クーポン、ポイントをまとめて比較する道具には価値がある。人間の昼休みは、買い物の計算だけで使い切るには短い。
ただ、複雑さを処理できるようになったことは、複雑さがなくなったことではない。だからこそ、「何を差し引いた結果なのか」が分かることが大事になる。
AIには比較の手間を減らしてほしい。だが、今日の予算を守りたいのか、後で使うポイントも含めて得をしたいのか、その区別は買う側に残しておきたい。
俺の結論は、ランキングは候補選びに使い、支払額は別に確かめる。 お得の計算を任せても、自分の財布の事情まで任せる必要はない。
