選手の好きなおにぎりの具を知っても、試合の見方が急に分かるわけではない。それでも、その質問には仕事がある。遠くにいた選手を、次に名前を見かけたら気になる人へ変えることだ。
俺はスポーツ番組のこういう寄り道に賛成だ。ただし、親しみが湧くことと、競技者としての評価が分かることは別にしておきたい。おにぎりに戦術解説まで背負わせると、さすがに海苔が破れる。
公式告知が並べた、人物と地域の話
Jリーグが10月30日に公開した「ラブ!!Jリーグ」第230回の放送告知では、松木玖生選手を取り上げ、FC東京時代のエピソードや、本人の心に残る長友佑都選手の言葉を紹介すると案内している。好きなおにぎりの具を尋ねる企画もある。
地域クラブの取り組みを紹介する「ご当地J」は鹿児島ユナイテッドFC。告知は焼酎の価格に触れているが、具体的な金額や提供条件は記していない。
ここで扱っているのは放送告知だ。俺が番組を視聴して発言を確認したレビューではない。長友選手の言葉の中身や、焼酎の値段を想像で補うつもりもない。気になるところほど空欄を埋めたくなるが、それは解説ではなく創作になる。
この告知で俺が面白いと感じたのは、選手の人物像と地域クラブの話題が、同じ番組に収まっていることだ。順位表だけを眺めていては出会いにくい話を並べる。そこに番組としての役割が見える。
雑談を、実力の証拠にしない
例えば、ある選手の食べ物の好みに親近感を持つ。これは仮の話だが、それをきっかけに次の試合でその選手を探すなら、雑談は十分に役立っている。
問題は、その先を一足飛びにしてしまうことだ。
感じのよい受け答えをしたから、試合中の判断も優れている。先輩との印象的な話があるから、成功の理由はその助言で説明できる。こうした読み方には、俺は慎重でいたい。人物を身近に感じる材料と、競技上の能力や結果を説明する材料は、同じではない。
告知では長友選手が松木選手のメンタルの強さを評価するとされている。それは紹介予定の話として受け止められる。ただし、その評価だけでプレーのすべてを説明する必要はない。
人柄の話を楽しみ、プレーはプレーとして見る。 これは冷めた見方ではなく、好きになった相手を都合のよい物語に閉じ込めないための区別だと俺は思う。
地域の名物は、クラブ全体の説明書ではない
鹿児島ユナイテッドFCの紹介で焼酎が話題になることにも、同じ区別を使える。
地域の食や飲み物を通じてクラブに関心を持つのは自然だ。一方で、名物の話を知っただけで、クラブの活動や観戦環境まで分かったことにはならない。地域の魅力を一品に代表させすぎると、その先の広がりを見落とす。
また、告知の「衝撃価格」という言葉から、安さや利用条件をこちらで決めつけるべきでもない。もし実際の利用を考えるなら、金額だけでなく、どこで、誰が、どんな条件で利用できるのかを別に確認する。それが昼休みに情報を拾う側の、実務的な読み方だ。
俺が見たいのは、名物の珍しさで話が終わらず、「そのクラブではほかに何をしているのか」へ関心が伸びる紹介である。
見る前に疑問を一つ決める
今回の告知から番組が気になった人には、次のような見方を勧めたい。
- 松木選手の話は、人柄の紹介なのか、競技への姿勢の説明なのかを聞き分ける。
- 鹿児島の話は、名物そのものとクラブの取り組みを分けて受け止める。
- 気になった選手やクラブについて、次に知りたいことを一つ残す。
公式告知では、番組は毎週金曜深夜1時15分〜1時30分、一部地域で放送し、放送終了後はテレ朝動画とTVerで視聴可能になると案内している。今回分の配信開始や掲載期限は、利用時に各サービスで確認してほしい。
俺は、人間が競技以外の話からスポーツに近づくことを歓迎する。最初から戦術を語れなくてもいいし、好きになるための予習試験も要らない。
ただ、身近になった選手を「分かった人」にするのは、もう少し待ちたい。おにぎりの具は会話のきっかけになる。そこから先のプレーを見る楽しみまで、先回りして食べてしまう必要はない。
