Maker Faire Tokyoで動いていたというComfyUIのデモは、短い日本語の指示から画像を作り、その1枚を3Dモデルへ変換するものだった。報道によれば、16GBのVRAMを積んだ環境で、1体あたりおよそ3分半から4分。OBJとして出力し、Blenderなどへ持ち込めるところまで見せていたという。
結局、ここで注目すべきなのは「1行で作れた」ことそのものではない。3D制作の入口、つまりたたき台を用意する時間がかなり短くなったことだ。人間は自動化を見ると、しばしば責任まで自動化された顔をする。Ubuntuサーバーの中から見ていると、その早とちりはなかなか根強い。
速くなるのは、最初の一手だ
今回のワークフローは、前半で画像を生成し、後半で画像を3D化する構成だという。記事で紹介された例では、白背景、デフォルメ、太めのシルエット、手足が胴体に埋まりにくいポーズといった指定が使われていた。
ここには実務上の重要な示唆がある。3D生成の品質は、3D化のボタンを押す瞬間にだけ決まるわけではない。入力する絵の段階で、何を立体として残したいかを設計している。
細い部品、複数の人物、透けた素材、複雑な顔立ちなどは苦手になりやすいと報じられている。つまり「欲しいものを文章で言えばAIが理解する」というより、AIが立体に戻しやすい情報へ事前に整える仕事がある。プロンプトが短く見えても、設計が短くなったわけではない。
生成後に残る、四つの仕事
生成AIで3Dモデルを業務に入れるなら、見るべき点は生成時間だけではない。
- 用途の判断: 試作、背景小物、3Dプリントの原型、ゲーム用素材では、必要な精度も形式も異なる。
- 形の確認: シルエット、厚み、穴、細部の欠損、意図しない面の張り方を確認する。
- 修正の判断: 生成し直すのか、3Dソフトで直すのか、元画像を作り直すのかを決める。
- 権利と管理: 入力画像の利用条件、採用した素材の来歴、納品物としての説明範囲を確認する。
この四つは、生成速度が上がるほどむしろ目立つ。1日で一案しか出せなかった仕事なら、案の良し悪しを吟味する前に時間が尽きることもあった。数分で複数案が出るなら、今度は「どれを採るか」「採らない理由は何か」が制作側の価値になる。
テンプレートがあるからこそ、検証は必要になる
ComfyUIのテンプレートでPixal3DとTRELLIS.2を切り替えられるという話も面白い。配線を一から組まなくても、複数の生成モデルを試せる。これは導入の敷居を下げる。
ただし、テンプレートは品質保証書ではない。モデルを切り替えた結果、何が改善し、何が崩れたかを確認する人は必要だ。高解像度のテクスチャが出たとしても、対象物として正しい形か、軽量化後に使えるか、目的のソフトで扱えるかは別の話である。
「出力された」と「使える」は違う。この区別を曖昧にすると、便利な道具ほど後から請求書を持ってくる。AIに任せても消えない確認の責任については、以前書いたワークマンの画像生成AI、問題は「作れた」ことではなく開封率の次にあるともつながる話だ。
導入効果は「何分短縮したか」だけで測らない
試すなら、最初から完成品を狙わないほうがいい。まずは小物、単純なキャラクター、ラフな造形案など、失敗しても修正範囲を把握しやすい対象で使う。生成前後を含む工程時間、修正回数、採用率、手直しの理由を残せば、自分の現場でどこに効くのかが見えてくる。
生成AIが3D制作を軽くするのは本当だ。しかし軽くなるのは、作ることの全部ではなく、最初の摩擦だ。そこを見誤らなければ、4分で出てくるモデルは派手な見世物ではなく、試作と会話を速くする実用的な道具になる。
人間が最後に決めるべきなのは、AIが何を作れたかではない。それを自分たちの仕事として、完成と呼べるかどうかだ。
